国民年金は基本的に65歳からの支給開始です。しかし、60歳から受給資格があり、繰上げ受給することも可能です。
一般的には繰下げると受給額が増えますという紹介が多いですが、何歳から受給するのがお得かは人それぞれなので、60歳受給開始も検討してみることをお勧めします。
年金受給年齢の繰上げと繰下げ
繰上げや繰下げをする場合、期間に応じて年金額が変化します。1ヶ月単位で変わり、1ヵ月早くするごとに0.5%減少、1ヶ月遅くするごとに0.7%ずつ増加します(2021年時点※1)。
ザックリと増減額
- 60歳:-30%
- 65歳:0%
- 70歳:+42%
この受給額は一生変わらないので、生活が困難でなければ繰下げ受給を勧められることが多いです。しかしこれは平均寿命まで生きられればの話です。
持病を抱えていて、平均寿命まで生きられる可能性が低い場合、トータル受給額が少なくなる可能性が高くなります。
ということで、何歳まで生きられれば総受給額が逆転するのかを見積もってみました。あくまでも見積もりなので、ザックリとしたものです。
※1:繰上げ減額率は2022年度から0.4%に引き下げられる予定です。
受給開始年齢による総受給額の違い
例1:一般的な額を受給
65歳受給開始での受給額が、年間78万円としての試算です。
- 60歳:54.6万円
- 65歳:78万円
- 70歳:110.8万円
この場合、総受給額は以下の推移となります。
60歳開始を65歳開始の方が追い越すのは75歳、65歳開始を70歳開始が追い越すのは81歳です。つまり、75歳まで生きる自信が無いのであれば60歳からもらった方が総受給額が大きくなります。
これが一般的な受給開始年齢の違いで言われる差です。
しかし、人によってはさらに違う場合もあります。生活に余裕がある場合、受給年齢を速めたからと言って年金を生活に使う必要はありません。受給年金を年率3%で運用した場合を見てみます。
例2:年金を3%で運用
受給した年金を自分で運用して年率3%で増やした場合です。定期預金の利率がほぼゼロの時代に3%が現実的かという意見はあるでしょうが、株式で業績が安定した高配当銘柄で運用すれば十分可能です。もちろん株価下落による損失リスクもありますが、そこはあくまでも例として見てください。
この場合、65歳受給開始に逆転されるのは80歳まで引き延ばされます。65歳開始が70歳開始に抜かれるのも86歳まで先になります。
投資経験がない人や、生活に余裕がない人には勧められませんが、余裕があれば受給開始年齢を早くするというのは十分選択肢に入ります。
例3:3%で運用、65歳以降55万円/年取り崩し
例1,例2の場合、受け取った年金を一切自分では使わないことになってしまうので、もう少し現実的なところで、3%で運用しつつ、65歳以降は55万円ずつ使っていくパターンです。
自分でもらった年金、全て遺産で残してもしょうがないので、生きているうちに使おうという場合です。
この場合でも80歳まで資産額は逆転しません。これを早いとみるか遅いとみるかは人それぞれですが、自分の健康状態や運用スキルなども合わせて受給開始年齢を考えてみる必要がありそうです。
注意点
今回の見積もりはかなり大雑把な見積もりです。
年金額によって所得が増減すると、国民健康保険料、介護保険料、所得税、住民税などにも影響があります。損得を考える場合、それらの増減も考慮する必要があります。
運用については損失を抱えるリスクがあります。知識や経験が無い方にはお勧めできませんん。損失が生活苦に直結するような方にもお勧めできません。
そして、一番のリスクは『長生きするリスク』です。持病があろうと平均寿命を大きく超えて生きる可能性もあります。その場合でも生活していける資金計画とする必要があります。
損得であまり細かく考えてもしょうがないですが、自分に合った受給方法は自分で考える必要があります。自分で判断できない場合は、ファイナンシャルプランナーなどに相談してもいいでしょう。
まとめ
- 平均寿命まで生きる可能性が低い
- 自分で安定運用する自信がある
- 長生きしても生活が破綻しない資産がある
こんな場合、年金の60歳受給の検討余地があります。
私の場合、悪性リンパ腫とはいえ濾胞性リンパ腫であり、実際のところ寿命がどうなるかはわかりません。今のところ、60歳から繰上げ受給するつもりでいますが、まだまだ先の話で制度自体の変更もあるかもしれないので、10年後に再考したいと思います。
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